重陽の節句 　秋を代表する日本の花が菊です。 菊月とは、陰暦九月（本来は、現代の一ヶ月遅れで１０月になりますが、月日の数字が受け継がれています）の異称です。 能楽の「菊慈童（枕慈童）」は、菊の露を飲んで不老不死になったという童の伝説によるものです。 　宮中では、陰暦九月九日に「菊花の宴」が催されますが、「重陽の宴」の別称です。 「九」は陽数中の最も陽とされ、その数が月と日とに重なるので、「重陽」とも「重九」とも云われています。 　たて花では、菊を真に立てる教えであり、その菊は黄菊です。 そえ草、下草には、糸すすき・いちはつ・著莪等の花材が取り合わされています。 　立花では、菊・萩・鶏頭を構成の一部に取り入れるように、教えています。 　いけはな（活花・挿花・生花）では、大中小の菊が用いられます。

９月の花
	中流枝は水際より曲尺合（カネアイ）有 　　伝云水際より六寸 中流枝は請遣わず流枝にて請を持たる故也 　　「池坊家伝百ヶ条聞書」 中流枝とは、請と流枝の力を流枝一本にして、真とつり合わせる技法です。 池坊専好（2代）の立花図に見ることが出来ます。 真・・・・薄　 副・・・・松　 中流枝・・松 正真・・・鶏頭　 見越し・・枇杷　 前置・・・躑躅 胴作り・・ひば、枇杷　 扣・・・・杜若 色切り・・柾　 木留・・・槿　 草留・・・アスター 姿直し・・竜胆、著莪、アスクレピアス、フェルト草 後囲い・・松
	左流枝の時は流の常座に かよわきものをあいしらふべし 　　　「古今立花大全」 真の枝が、正中線からゆがみ出て、再び中央を乗り越えて、右に大きく返った真の姿を「過の真」とも「余る真」とも云います。 この時、真とのつり合い上、流枝を反対側、扣の出所から出すことを、「左流枝」と云います。 真・・・・松　 副・・・・狗子柳　 請・・・・・枇杷 正真・・・松　 左流枝・・松　 流枝の座・・狗子柳 前置・・・椿　 胴作り・・伊吹木　 木留・・・・椿 草留・・・小菊　 後囲い・・松　 花座・・・・鶏頭 姿直し・・女郎花、竜胆、菊、ミリオンキッス
	前厚くば後ろを薄く 　　　「池坊家伝百ヶ条」　　 　 真・副・請の三枝の挿し口を、前後の境にします。 「前厚く」と云うのは、正真・胴作り・前置・姿直しを厚く立てた時のことです。 真・・・・松　 副・・・松　 請・・・菊 正真・・・菊　 流枝・・松　 前置・・椿 胴作り・・木瓜、伊吹木　 扣・・・菊 木留・・・椿　 草留・・小菊　 後囲い・松 姿直し・・竜胆、枇杷